海外赴任から帰国後、住民税はいつから?翌年6月開始で初年度が安い理由を人事が解説【計算ミスではない】
海外赴任から帰国した年は住民税がかからず、翌年6月から始まります。しかも帰国初年度の住民税は「思ったより安い」のが正常で、計算ミスでも脱税でもありません。海外赴任中の給与が前年所得に含まれないためです。帰国月別の目安と、翌年6月の手取り減への備えを、送り出し実務5年の人事が解説します。
海外赴任から帰国した年は、住民税がかかりません。住民税が再び始まるのは、帰国した翌年の6月からです。
そして、帰国して最初に来る住民税は「思ったより安い」のが正常です。計算ミスでも、まして脱税でもありません。海外赴任中に受け取っていた給与が、住民税の計算対象に含まれないからです。真面目な人ほど「金額が少なすぎる。何かの間違いでは」と不安になりますが、その心配はいりません。
私は人事企画9年目で、海外赴任者の送り出しと帰任の実務を約5年担当してきました。帰任した社員から受ける質問で意外に多いのが、この「住民税が安すぎて不安」という相談です。行きのとき(出国時)に住民税で驚いた経験があるぶん、帰りでも身構えている人が多い。この記事では、帰国後の住民税がいつ・いくらで始まるのか、そして「安い」のがなぜ正常なのかを解説します。
| あなたの状況 | まず読むところ |
|---|---|
| 帰国後、住民税がいつから来るか知りたい | 再開は翌年6月から |
| 初年度の住民税が安い。間違い?脱税? | 「安すぎて怖い」への答え |
| 翌々年に住民税が上がると聞いた | 2年目から本来の額に戻る |
| 帰国時にやるお金の手続きを知りたい | 住民税以外の帰任手続き |
再開は翌年6月から:帰国した年はかからない
▶ 私の答え:帰国した年の1月1日は海外にいたので、その年度の住民税はゼロ。始まるのは翌年6月からです。行きと帰りで、制度はきれいに対称になっています。
住民税のルールは行きも帰りも同じで、2つだけです。
- 毎年1月1日に住民票のある市区町村が課税する
- 課税の対象は前年1月〜12月の所得で、給与天引きはその年の6月から翌年5月まで
帰国のケースに当てはめます。たとえば2026年の途中に帰国した場合、2026年1月1日の時点では、あなたはまだ海外にいました。だから2026年度分(2026年6月〜2027年5月に徴収される分)の住民税は、そもそも課税されません。帰国した年は、住民税なしで暮らせます。
そして2027年1月1日には日本に住んでいるので、2027年度分の住民税が、2027年6月から始まります。これが「帰国後の住民税は翌年6月から」の意味です。
行きのときに「出国してもしばらく住民税が引かれる」ことに驚いた人は多いはずです(その仕組みは海外赴任の住民税はいつまで払う?で解説しています)。帰りはその逆で、1年遅れの後払い構造が、こんどは有利に働きます。
「安すぎて怖い」への答え:それが正しい金額です
▶ 私の答え:帰国初年度の住民税が安いのは、計算の対象が「帰国後に日本で受け取った給与」だけだからです。海外で働いていた期間の給与は入りません。正しく計算された結果なので、安心してください。
ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。
帰国して翌年6月、初めての住民税の通知を見た人が、こう思います。「あれ、こんなに少ないの?計算が間違っているのでは」「もしかして、自分は脱税してしまっているのでは」。
間違っていませんし、脱税でもありません。理由はシンプルです。
住民税は「前年の所得」に対してかかります。年の途中で帰国した場合、その前年のうち、海外で働いていた期間(非居住者だった期間)の給与は、日本の住民税の課税対象に含まれません。課税対象になるのは、帰国して日本で働き始めてからの給与です(日本の不動産を貸していたなど、赴任中も日本国内で生じていた所得がある人は、その分が加わります)。
数字で見ます。2026年の7月に帰国した人の、2027年度(2027年6月開始)の住民税を考えます。
- 2026年1月〜6月:海外で勤務(この間の給与は住民税の対象外)
- 2026年7月〜12月:日本で勤務(この半年分の給与だけが対象)
丸1年働いた人の半分の所得しか課税対象になりません。住民税がおよそ半分になるのは、当然の結果です。少ないのではなく、正しいのです。
真面目な会社員ほど「得をしているようで落ち着かない」と感じますが、これは制度どおりの計算です。行きのときに前年分をきちんと納めた、その裏返しだと考えてください。損も得もない、時間差の精算です。
2年目から本来の額に戻る:翌々年6月の手取り減に備える
▶ 私の答え:安いのは初年度だけです。帰国後にまるまる1年働いた分が反映される2年目(翌々年6月)から、住民税は本来の水準に上がります。ここで手取りが減るので、今から知っておいてください。
初年度が安いのは、前年の所得が「帰国後の数ヶ月分」だけだからでした。裏を返すと、帰国後に丸1年働いた翌年からは、その1年分の所得に対して住民税がかかります。
先ほどの2026年7月帰国の例で言えば、
- 2027年度(2027年6月〜):2026年の帰国後半年分が対象 → 安い
- 2028年度(2028年6月〜):2027年のフル1年分が対象 → 本来の水準
年収700万円の会社員なら、住民税は年におよそ35万円、月にして約3万円です(扶養構成などで変わる概算)。帰国2年目の6月から、この水準の天引きが本格的に始まります。手取りが月3万円ほど下がる感覚です。
帰国直後は、赴任中に上がった生活水準がまだ残っている時期です。そこへ2年目の住民税が乗ってくるので、知らないと「なぜ急に手取りが減った」と慌てます。送り出す側として、この2年目の増額に驚く帰任者を何人も見てきました。初年度の安さは一時的、2年目から本番——これだけ覚えておけば、家計の計画を崩さずに済みます。
なお、住民税には所得が低いと課税されない基準(非課税限度額)もあります。帰国後の所得がごく少ない年は、初年度がゼロに近くなることもあります。金額の詳細はお住まいの自治体の通知で確認してください。
住民税以外の、帰国時にやるお金の手続き
住民税は「待っていれば翌年6月から自動で始まる」ので、帰国時に自分で何かする必要はありません。むしろ帰国時に動くべきなのは、赴任中に止めていたものの再開です。
- NISA:継続適用で保有していた人は、帰国届(非課税口座帰国届出書)を出して積立を再開する(NISAの記事参照)
- 児童手当:帯同で停止していた場合、転入から15日以内に再申請する(児童手当の記事参照)
- 証券口座・特定口座:帰国後に居住者向けの口座へ戻す手続きが必要な場合がある
住民税が「安くて浮いた」初年度は、赴任中に崩れた資産形成のペースを立て直す好機でもあります。浮いた分をNISAの再開に回す、といった使い方を考えるにはいいタイミングです。
よくある疑問4つ
Q1. 12月末に帰国するのと、年明けに帰国するのとで、住民税は変わる?
ほとんど変わりません。住民税の対象になる前年の所得には、海外赴任中の給与が含まれないからです。12月末に帰国して、年内に日本での給与を受け取っていなければ、その年の課税所得はほぼゼロ。年末に帰るか年明けに帰るかで、翌年度の住民税はほぼ変わりません。帰国のタイミングを数日単位で気にする必要はありません(帰国後に年内の国内給与がある場合は、その分が対象になります)。
Q2. 本当に脱税になっていないか、念のため確認したい
なっていません。海外赴任中の給与が日本の住民税の対象外になるのは、非居住者に関する制度どおりの扱いです。あなたが何かを隠したわけでも、申告を怠ったわけでもありません。それでも心配なら、住民税の通知(納税通知書)の課税明細で、課税の対象になっている所得の期間を確認してください。帰国後の期間だけが対象になっているはずです。どうしても不安なら、お住まいの市区町村の住民税窓口で確認できます。
Q3. 帰国後、確定申告は必要?
給与だけの会社員なら、帰国した年の年末調整を勤務先が行うので、原則として確定申告は不要です。海外勤務中に不動産所得があった人や、医療費控除・ふるさと納税で還付を受けたい人は確定申告をします(出国時の考え方と共通です。出国前の確定申告の記事も参考にしてください)。
Q4. ふるさと納税は、帰国した年からできる?
帰国して日本の居住者に戻れば、その年のふるさと納税ができます。ただし控除されるのは翌年度の住民税と、その年の所得税からです。帰国初年度は所得(帰国後の数ヶ月分)が少ないぶん控除の上限も小さくなるので、寄付のしすぎに注意してください。フル1年働く2年目からは、通常どおりの上限に戻ります。
まとめ
- 帰国した年は1月1日を海外で迎えるため住民税なし。再開は翌年6月から
- 帰国初年度の住民税が安いのは正常。海外勤務中の給与が課税対象に含まれず、帰国後の給与だけで計算されるため。計算ミスでも脱税でもない
- 安いのは初年度だけ。2年目(翌々年6月)から本来の水準(年収700万円で月約3万円)に上がる。ここの手取り減に備える
- 住民税は自動で始まるので手続き不要。動くべきはNISA・児童手当・証券口座の再開
- 帰国のタイミングを数日単位で気にする必要はない(海外勤務分は前年所得に入らない)
注:本記事の内容は2026年7月時点の情報に基づいた一般的な解説です。住民税の課税内容はお住まいの市区町村の納税通知書でご確認ください。制度の詳細は総務省(個人住民税)を参照してください。
マネパパ
30代会社員・人事企画部門・JGCホルダー。従業員持株会を3年で停止し、インデックス投資(新NISA・iDeCo)に全面移行。 マイルで乳幼児連れリゾート旅行を実践中。数字とリアルにこだわった発信を心がけています。
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