海外赴任中の日本株の配当金はどうなる?非居住者の税率15.315%・申告不要の仕組みを人事が解説
海外赴任中も日本株の配当は受け取り続けられます。非居住者の上場株式の配当は15.315%の源泉徴収で課税関係が完結し、確定申告は原則不要。住民税5%がなくなるため日本側の手取りはむしろ増えます。ただし赴任先の国での課税が別にあり、そこは「日本勤務時より損させない」というグローバルモビリティの原則を踏まえ人事に相談する価値があります。特定口座・NISA・外国株の扱いまで、送り出し実務5年の人事が解説します。
海外赴任が決まっても、日本株の配当は受け取り続けられます。そして非居住者になった後の日本での課税は、上場株式の配当なら15.315%の源泉徴収だけで完結し、確定申告は原則不要です。
意外なことに、日本側の税率は居住者のときより下がります。居住者の源泉徴収20.315%のうち住民税5%は、非居住者には課されないからです。ただし、これで話は終わりません。赴任先の国での課税が別にあります。日本側と赴任先側、2つの国の扱いを分けて理解するのが、この論点の全体像です。
先にお断りしておきます。私は人事企画9年目で、海外赴任者の給与・税務の送り出し実務を約5年担当してきました。この記事で正確にお伝えできるのは日本側の個人所得税の扱いまでです。赴任先の国の税制は国ごとに違い、私の守備範囲を超えます。その線引きも含めて、どこまでが確定情報で、どこから先が確認事項なのかを整理します。
| あなたの状況 | まず読むところ |
|---|---|
| 特定口座で日本株・投資信託を保有 | 日本側の課税は15.315%で完結 |
| NISA口座の保有分がある | NISA分の配当の扱い |
| 米国株など外国株もある | 外国株は別の世界になる |
| 赴任中に売却も考えている | 売却益の扱い |
日本側の課税:15.315%の源泉徴収で完結する
▶ 私の答え:受け取るたびに15.315%が引かれて、それで日本側は終わりです。確定申告は原則不要。手続きとして、あなたがやることはほぼありません。
非居住者が受け取る国内上場株式の配当(大口株主等を除く)は、支払いの際に所得税・復興特別所得税15.315%が源泉徴収され、それで課税関係が終了します。申告不要です。
居住者のときと比べてみます。
| 居住者(日本勤務時) | 非居住者(赴任中) | |
|---|---|---|
| 所得税・復興特別所得税 | 15.315% | 15.315% |
| 住民税 | 5% | なし |
| 源泉徴収合計 | 20.315% | 15.315% |
| 確定申告 | 申告不要を選択可 | 原則不要 |
数字を自分ごとにします。年間配当40万円の高配当株ポートフォリオなら、居住者の手取りは約31.9万円(40万円−81,260円)。非居住者は日本側だけ見れば約33.9万円(40万円−61,260円)。住民税5%がなくなる分、年2万円、日本側の手取りは増えます。
ただし、この「増える」でぬか喜びしないでください。後述のとおり、赴任先の国での課税が別にあります。日本側の完結は、あくまで片方の国の話です。
1つ、居住者時代との違いで知っておくべきことがあります。配当控除は使えなくなります。居住者なら配当所得を総合課税で申告して配当控除を受け、還付を取る選択ができましたが、非居住者にはこの選択肢がありません。毎年これで還付を受けていた人は、その分の還付はなくなると考えてください。
特定口座はどうなる:多くの場合、一般口座での保有になる
▶ 私の答え:出国すると特定口座は廃止され、一般口座での保有に変わるのが従来の一般的な扱いです。「年間取引報告書が来なくなる」——この変化だけは覚えておいてください。
特定口座は居住者向けの仕組みです。出国して非居住者になると、特定口座は廃止され、保有商品は一般口座に移されるのが従来の一般的な扱いです。株や投資信託がなくなるわけではありません。入れ物が変わるだけです。
実務上の変化は2つあります。
- 年間取引報告書が発行されなくなる。帰国後に売却するとき、取得価額の管理は自分の記録が頼りになります。出国前に、保有銘柄の取得価額一覧を保存しておいてください
- 配当への源泉徴収は続くので、受け取りの手取りベースの感覚は変わりません
なお、近年は出国時の口座の扱いを広げる証券会社も出てきており、対応は各社で差があります。証券口座の出国手続きの記事で書いたとおり、出国前の連絡の際に「特定口座はどうなりますか」も一緒に確認してください。
NISA保有分の配当:非課税のまま。ただし受取方式に注意
▶ 私の答え:継続適用の手続きをしたNISA口座の配当は、非課税のままです。確認すべきは「株式数比例配分方式」になっているか、その1点です。
NISAの記事で解説した継続適用届出書を出して保有を続ける場合、NISA口座内の株式・投資信託の配当や分配金は、赴任中も非課税のままです。
1点だけ、確認してほしい設定があります。株式の配当を非課税で受け取るには、配当の受取方法が「株式数比例配分方式」(証券口座での受け取り)になっている必要があります。銀行振込や郵便局での受け取りにしていると、NISA口座の保有分でも源泉徴収されてしまいます。これは居住者でも同じルールですが、出国前の設定確認リストに入れておいてください。
赴任先の国での課税:ここから先は「確認事項」
▶ 私の答え:多くの国は、居住者の全世界の所得に課税します。日本の配当も赴任先では課税対象になり得ます。ここは国ごとに違うので、私は答えを持っていません。確認先だけお伝えします。
日本側の課税が15.315%で完結しても、あなたは赴任先の国の税務上の居住者になります。多くの国は自国の居住者に対して全世界の所得への課税を行うため、日本株の配当も赴任先の国での課税対象になり得ます。
同じ配当に日本と赴任先の両方が課税する形になるため、二重課税を調整する仕組みが用意されています。
- 租税条約:日本と多くの国が結んでいる条約で、配当への源泉税率の上限が定められていることがあります。適用には「租税条約に関する届出書」を支払者経由で提出する手続きがあります
- 外国税額控除:赴任先の国での申告時に、日本で源泉徴収された税額を控除できる仕組みがある国が多くあります
ここで、多くの人が本当に不安に思っていることに答えます。「日本で2万円得しても、現地で取られたら結局マイナスでは?」。送り出す側の内側の話をします。
まず、多くの人が恐れる「知らないうちに申告漏れ」は、避けやすい環境が整っています。勤務先が駐在員の現地申告を税務サービス(税理士法人など)に委託していれば、現地の所得税はプロが計算してくれます。委託の対象が給与だけか、配当などの個人の所得も含むかは会社によりますが、まずは勤務先にサポートの範囲を確認すれば、自分が何を自分でやる必要があるのかがはっきりします。
そのうえで、グローバルモビリティ(人の国際異動)を担う人事には、ひとつの大原則があります。海外赴任で社員を日本勤務時より損させない、という考え方です。損をさせる制度にすると、誰も赴任を引き受けなくなり、事業が回らなくなるからです。赴任先の所得税を会社が負担するみなし税の仕組みも、この原則から来ています。
だから、「日本にいたら生じなかった費用」を会社が補助する施策も検討されます。現地の幼稚園代の補助や、日本なら無料だった子どもの予防接種費用の会社負担などは、その例です。私自身、人事として「日本に住んでいたら、この費用は生じなかったのですが」という相談を受け、その都度、会社補助を検討してきました。配当を含め、個人の所得税負担が日本勤務時より重くなる部分についても、抱え込まずに人事へ相談する価値はあります。
ただし、これは「相談ベース」です。すべての要望が通るわけではありません。多少の負担増を見越して海外赴任手当を厚めに設計している会社もあり、その場合は「手当で吸収してください」となることもあります。それでも、損を自分で確定させる前に、一度人事に聞く——これが、損をしないためのいちばん現実的な一手です。
以上が「損するのか」への、送り出す側からの答えです。ただし、条約の内容も現地の申告方法も国ごとに全部違います。ここから先を一般論で断定するのは不正確になるので、しません。確認先は2つです。
- 勤務先の会社が契約している税務サービス。駐在員の現地申告を税理士法人に委託している勤務先は多く、その場合、あなたの配当所得の現地での扱いはその窓口で確認できます。まず人事に「現地の税務申告のサポートはありますか」と聞いてください
- 勤務先のサポートが給与所得のみ対象の場合は、現地の税務専門家への相談になります
送り出す側の経験で言うと、勤務先の税務サポートの範囲(給与だけか、個人の投資所得も見てくれるか)は会社によってかなり違います。出国前にサポート範囲を確認しておく——これが投資家の赴任者に私が伝えてきた、いちばん実務的な助言です。
売却益の扱い:日本では原則課税されない
▶ 私の答え:非居住者が上場株式を売却した利益は、日本では原則課税されません。ただし赴任先の国では課税され得ます。「日本で税金がかからない=無税」ではありません。
非居住者が国内の上場株式を売却して得た譲渡益は、日本では原則として課税されません。
ただし例外はいくつかあります。保有割合が大きい場合のほか、ストックオプションの権利行使で取得した株式の譲渡や、不動産関連法人の株式の譲渡などが課税の対象になります。会社から付与された株式やストックオプションがある人は、「自分は大株主ではないから関係ない」と考えず、売却の前に扱いを確認してください。
ただし2つ、注意があります。
- 赴任先の国では課税され得ます。株式の譲渡益への課税は国によって扱いの差が大きい分野です。赴任中に売却を考えるなら、実行前に現地での扱いを確認してください
- 出国時に有価証券等の合計が1億円以上ある人には、国外転出時課税という別の制度があります。該当しそうな人は、出国前に必ず税務署か税理士に相談してください(この制度は対象者が限られるため、この記事では深入りしません)
よくある疑問4つ
Q1. 米国株の配当はどうなる?
外国株の配当は、日本株と別の世界になります。非居住者が受け取る外国株式の配当は日本の国内源泉所得に当たらないため、日本での課税の扱いが変わり、米国側の源泉徴収も、証券会社に届け出ている居住地情報によって変わります。日本株のようにシンプルには整理できないので、外国株の保有が大きい人は、出国前の証券会社への連絡の際に「外国株の配当の扱い」を必ず確認事項に入れてください。
Q2. 日本と赴任先の両方で課税されたら、二重課税では?
そのための調整の仕組みが、先ほどの租税条約と外国税額控除です。正しく手続きをすれば、まるまる二重に取られたままにはならない設計になっています。ただし調整は自動ではなく、現地での申告や届出という手続きを踏んで初めて機能します。「仕組みはある。ただし手続きが要る」と覚えてください。
Q3. 非上場株式や、持株会の株の配当も同じ?
違います。この記事の15.315%は上場株式等(大口株主等を除く)の話です。非上場株式の配当は20.42%の源泉徴収で、扱いが異なります。持株会をやっていた人は、そもそも出国時に持株会をどうするかという別の論点があるので、会社の持株会事務局に確認してください。
Q4. 帰国したら、配当の税金はどう戻る?
帰国して居住者に戻れば、源泉徴収は20.315%(住民税あり)に戻り、配当控除や損益通算の選択肢も復活します。特定口座を使っていた人は、帰国後に口座を開設し直す手続きが必要になる場合があります。帰国時のお金の手続きは、別の記事でまとめて解説します。
まとめ
- 海外赴任中も日本株の配当は受け取り続けられる。日本側は15.315%の源泉徴収で完結、確定申告は原則不要
- 住民税5%がなくなるため、日本側の手取りは居住者時代より増える(年間配当40万円なら約2万円)。ただし赴任先の国での課税が別にある
- 配当控除は使えなくなる。特定口座は一般口座になるのが一般的な扱いで、取得価額の記録を出国前に保存しておく
- NISA継続適用分の配当は非課税のまま。株式数比例配分方式の設定だけ確認
- 現地でも課税され得るが、勤務先の税務サービスに委託があれば申告漏れは避けやすい。「日本勤務時より損させない」がグローバルモビリティの大原則——負担増は抱え込まず人事に相談する価値がある(ただし相談ベース)
- 赴任先での扱いは国ごとに違う。勤務先の税務サポートの範囲を出国前に確認するのが最も実務的な一手
- 売却益は日本では原則非課税だが、ストックオプションで取得した株式などは例外。現地では課税され得る。1億円以上の人は国外転出時課税を要確認
注:本記事の内容は2026年7月時点の情報に基づいた一般的な解説です。日本側の課税の詳細は国税庁(非居住者等に対する課税のしくみ)を、赴任先の国での扱いは現地の税務専門家または会社の税務サポート窓口にご確認ください。
マネパパ
30代会社員・人事企画部門・JGCホルダー。従業員持株会を3年で停止し、インデックス投資(新NISA・iDeCo)に全面移行。 マイルで乳幼児連れリゾート旅行を実践中。数字とリアルにこだわった発信を心がけています。
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