by マネパパ 30代会社員のFIREとマイル帳
💰 資産形成 更新: 2026年10月15日

マッチング拠出 vs iDeCo|2026年の上限撤廃で判断軸が変わった。制度を設計した人事9年目が試算

マッチング拠出とiDeCoはどちらが得か。2026年4月に「本人の掛金は事業主掛金以下」の制限がなくなり、規約が対応した会社ではマッチング拠出でも枠を広げられるようになりました。判断軸は「規約が対応したか」「出したい額がマッチングの枠に収まるか」「iDeCoの手数料÷信託報酬の差で元が取れる残高」の3つです。在職中は資産を移せないこと、拠出額別の試算、制度を設計した人事9年目の私がマッチング拠出を月22,000円に増やした結論まで確認できます。

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「マッチング拠出のままで本当にいいのか?」

人事企画9年目の私が、自社のマッチング拠出制度を設計した立場でありながら、本気で悩んだ問いです。

2026年は、この問いの前提が2回変わります。

  • 2026年4月1日:マッチング拠出の「本人の掛金は事業主掛金以下」という制限が撤廃された(勤務先の規約が対応すれば、事業主掛金を超えて出せる)
  • 2026年12月1日:iDeCoと企業型DCの拠出限度額が、企業年金と合計で月6.2万円に上がる

以前は「マッチング拠出は事業主掛金までしか出せない。だから多く積み立てたいならiDeCo」でした。規約が対応した会社では、この理由が成り立たなくなります。

ただし、企業型DCのマッチング拠出からiDeCoへの「資産移管」は、在職中はできません(転職・退職時のみ可能)。在職中にできるのは「新規拠出先の切替」だけです。マッチング拠出を停止してiDeCoに加入すると、新しい拠出はiDeCoに、過去の積立は企業型DC口座にそのまま残ります。

私は人事企画9年目の会社員で、自社のマッチング拠出制度の導入設計を担当し、新入社員向けの投資教育資料の執筆と初回講義も担当しました。同時に、自分自身も8年前からマッチング拠出を続ける当事者でもあります。

結論として、私はiDeCoに切り替えず、2026年10月分からマッチング拠出を月5,000円から月22,000円に増やしました。判断の過程は別の記事にまとめています。

▶ iDeCoに切り替えなかった決め手は、手数料年2,232円と社内申請5分

この記事では、

  • 企業型DC・マッチング拠出・iDeCoの3制度の関係(2026年12月改正後のルール)
  • 会社の状況別に、マッチング拠出とiDeCoのどちらの枠が大きいか
  • 「同じ拠出額」で比較するとマッチング拠出が有利な理由
  • 拠出額別の損益分岐点(規約が未対応の会社の試算)
  • 判断軸3つ(規約・枠・コスト)と、状況別の判断フロー

を、人事として制度を設計した立場と、当事者としての両視点で解説します。

▶ DCの信託報酬と掛金で、20年後にどちらが多く残るか


企業型DC・マッチング拠出・iDeCoの3つを整理する

3制度の三角関係

まず3つの制度の位置関係を整理します。

制度拠出元主な特徴
企業型DC(事業主掛金)会社会社が掛金を出してくれる制度
マッチング拠出自分(給与天引き)企業型DCに自分で上乗せ
iDeCo自分(個人口座引き落とし)自分専用の確定拠出年金口座

ポイントは、マッチング拠出とiDeCoは「自分が拠出する」点では共通しているが、口座の所属が違うことです。マッチング拠出は会社が契約している企業型DCに上乗せ、iDeCoは自分で証券会社を選んで口座を作る形です。

同時加入は不可(2024年12月改正後)

2024年12月の改正で、企業型DC・マッチング拠出・iDeCoの併用ルールが整理されました。多くの会社員に関係する重要なルールが3つあります。

  1. マッチング拠出を実施している場合、iDeCo併用は不可
  2. マッチング拠出を停止すれば、iDeCoに加入可能
  3. 企業型DCのみ加入(マッチング拠出なし)の場合は、iDeCo併用可

つまり、マッチング拠出加入者にとって本記事は「マッチング拠出のままでいくか、iDeCoに切り替えるか」の二者択一の問題になります。「両方やる」は基本的に選べません。

2026年12月の改正でも、この併用を認める項目は示されていません(厚生労働省「2025年の制度改正」の施行項目)。

重要:在職中の資産移管はできない

ここが本記事の前提として最重要のポイントです。

マッチング拠出(企業型DC)からiDeCoへの「資産移管」は、在職中はできません。転職・退職時のみ移換可能です。

つまり、在職中に「iDeCoに切り替える」と判断した場合、

  • マッチング拠出を停止
  • iDeCoに加入
  • 既存の企業型DC残高はそのまま企業型DC口座で運用継続
  • 新しい拠出はiDeCo口座へ

という形になります。「乗り換え」ではなく、「新規拠出先の切替」です。これが本記事のシミュレーションの大前提になります。

同時加入ルールの詳細は、厚生労働省の確定拠出年金制度の主な改正等について(PDF)を参照してください。


2026年の2つの改正で、マッチング拠出とiDeCoの枠はどう変わるか

これがマッチング拠出 vs iDeCoの判断を変える最大の要因です。

会社の状況別:どちらの枠が大きいか(2026年12月以降)

勤務先の状況マッチング拠出の上限(本人)iDeCoの上限枠が大きいのは
規約が4月の改正に未対応事業主掛金まで6.2万円−企業年金の掛金iDeCo
規約が対応済み・企業型DCだけ6.2万円−事業主掛金6.2万円−事業主掛金同じ
規約が対応済み・DBもあり、経過措置で旧制度2.75万円−事業主掛金6.2万円−事業主掛金−DBの掛金相当額多くはiDeCo
規約が対応済み・DBもあり、経過措置なし6.2万円−DBの掛金相当額−事業主掛金6.2万円−事業主掛金−DBの掛金相当額同じ

「DBの掛金相当額」は、確定給付企業年金(DB)の掛金を月額に換算した額(他制度掛金相当額)です。「経過措置で旧制度」は、2024年12月の改正のときに、DBもある会社が企業型DCの上限を従前の月2.75万円のままにしている状態を指します(厚生労働省の事務連絡・参考資料)。

私の勤務先は3行目です。事業主掛金5,500円で、マッチング拠出は2026年10月分から月22,000円まで出せます。iDeCoにすれば、12月から月約46,500円でした(DBの掛金相当額を概算で月約1万円として計算)。

規約が対応すれば、「拠出したいのにできない」状態は消える

以前のマッチング拠出は事業主掛金以下しか出せず、私も月5,000円の上限で「枠が足りない」と感じていました。2026年4月の撤廃で、この制限は法律上なくなっています。

実際に増やせるかは、勤務先の規約しだいです。まず勤務先に、規約が改正に対応したかを確かめてください。私の勤務先は2026年10月に対応しました。

切替の手続きには10月30日と12月24日の期限がある

広がった枠を2026年12月分の掛金から使うには、期限までに手続きを終える必要があります。郵送の事前受付は2026年10月30日(金)必着、オンラインは2026年12月1日(火)〜12月24日(木)です。どちらで出しても反映されるのは同じ2026年12月分からで、早く出したほうが早く反映されるわけではありません。

受付を行うのは各運営管理機関です。期限と受付方法は、自分が口座を作る金融機関の案内で確認してください。

施行日・限度額・手続き期限の全体像は改正記事で確認できます:上限が月6.2万円に。増額の手続きは郵送とオンラインで期限が違う


マッチング拠出とiDeCoを「コスト4軸」で比較する

ここから本記事の核です。両制度を4軸で見比べます。

軸①:拠出可能額(会社の状況で決まる)

前章の表のとおり、どちらの枠が大きいかは会社の状況で決まります。規約が対応した企業型DCだけの会社では、差はありません。差が出るのは、規約が未対応の会社と、DBもあって経過措置を使っている会社です。

軸②:口座管理手数料

項目マッチング拠出iDeCo
国民年金基金連合会の手数料会社負担月105円(2027年1月から120円)
信託銀行の事務委託費会社負担月66円
本人負担合計0円/年月171円→186円/年2,052→2,232円

iDeCoは口座管理手数料が固定費として発生します。これが「iDeCoの足枷」です。拠出額が小さい人ほど、この固定費が利回りを押し下げます。

軸③:信託報酬

私の自社DCでこれまで主力にしていた外国株式インデックス型の信託報酬は年0.275%でした(以下の試算では0.27%で計算しています)。一方、iDeCoで楽天証券などを使えば、楽天・プラス・S&P500の信託報酬は年0.077%です。

  • 信託報酬差:0.27% − 0.077% = 0.193%/年

100万円運用なら、年1,930円のコスト差。30年運用なら信託報酬の差だけで数十万円の違いが出ます。

ただし2026年10月に、自社DCにも信託報酬が年0.09889%のたわらノーロード先進国株式が加わり、差は0.02189%に縮みました。iDeCoの手数料年2,232円をこの差で取り戻すには、iDeCoの残高が約1,020万円必要です。

軸④:商品ラインナップ

私の自社DCでは選定商品が約30本あります。一見豊富に見えますが、内訳は次のようなイメージです。

  • 国内株式インデックス・アクティブ
  • 外国株式インデックス・アクティブ(先進国・新興国)
  • J-REIT・海外REIT
  • 国内債券・外国債券
  • バランス型(複数)
  • 元本確保型(定期預金など)

2026年5月時点では、ここに「楽天・プラス・S&P500」のような、S&P500に連動する超低コスト商品はありませんでした。会社が選定した「外国株式インデックス型」は先進国全体に投資するタイプで、信託報酬もS&P500単独商品と比べると割高でした。

2026年10月に、先進国株式の低コスト商品(たわらノーロード先進国株式・年0.09889%)が加わりました。DCの商品一覧は、追加や入れ替えのたびに信託報酬を見直してください。

iDeCoならSBI証券・楽天証券・マネックス証券などで、低コスト商品をピンポイントで選べます。

NISA口座と同様、iDeCoの証券会社選びも重要です:2017年から両方使う会社員の結論:証券会社は経済圏で選ぶ


拠出額別の損益分岐点シミュレーション(記事の核)

ここが本記事の核です。「同じ拠出額」で比較した場合と、「iDeCoの枠を活用して拠出額を増やす」場合で、損益分岐点が大きく変わります。

この試算は、マッチング拠出を事業主掛金より増やせない前提(規約が4月の改正に未対応の会社)で、マッチング拠出の信託報酬を年0.27%として計算しています。規約が対応した会社では、マッチング拠出でも同じ額を出せるので、ケース②③の差は信託報酬と手数料だけになります。

ケース①:同じ拠出額(月5,000円)で比較

最もシンプルな前提:マッチング拠出を停止してiDeCoに切り替える際、拠出額は変えない(月5,000円のまま)。

  • 年間拠出額:60,000円
  • マッチング拠出:信託報酬0.27%、口座管理手数料ゼロ
  • iDeCo:信託報酬0.077%、口座管理手数料年2,232円

10年運用後の比較(名目運用利回り5%/年と仮定、信託報酬は基準価額から控除済として実質リターンを適用)

項目マッチング拠出iDeCo
拠出元本累計600,000円600,000円
信託報酬年0.27%年0.077%
実質リターン(年率)4.73%4.92%
口座管理手数料(年)会社負担(0円)約2,232円
10年累計の口座管理手数料0円約22,320円
10年後の残高約767,000円約756,000円
残高差(マッチング基準)±0約−11,000円

信託報酬差(0.27%→0.077%)でiDeCoの方が運用効率は良くなりますが、口座管理手数料(10年で約22,000円)がそれを上回るため、最終残高ではマッチング拠出が約11,000円多くなる計算です。

「同じ拠出額」前提では、信託報酬差の効果よりも口座管理手数料の固定費が重く、iDeCoは長期でも逆転しません。

ケース②:iDeCo現行上限(月20,000円)で拠出を増やす

規約が未対応でマッチング拠出を増やせない場合、拠出を月5,000円→月20,000円に増やすには、iDeCoに切り替えるしかありません。

  • 年間拠出額:240,000円(マッチングより180,000円多い)
  • 追加拠出による所得税・住民税の節税効果(所得税20%+住民税10%=30%として):年54,000円
  • 10年で節税効果540,000円

iDeCo口座管理手数料10年で約22,000円が発生しても、節税効果がそれを大きく上回ります。

加えて、ケース①で確認した通りiDeCo(信託報酬0.077%)はマッチング拠出(0.27%)より運用コストが低いため、長期で運用すればするほど信託報酬差による複利効果も上乗せされます。たとえば月20,000円を30年運用すると、信託報酬差0.193%による残高差は数十万円規模になります。「節税効果+低コスト運用」の二重メリットが、iDeCo切替の本当の価値です。

ケース③:2026年12月改正後の上限(月56,500円)で拠出を増やす

企業型DCだけの会社で事業主掛金が月5,500円の場合、2026年12月以降のiDeCo上限は月56,500円です(DBもある私の場合は約46,500円)。規約が未対応でマッチング拠出を増やせない会社なら、ここまでiDeCoで積み増せます。

  • 年間拠出額:678,000円(マッチングより618,000円多い)
  • 所得控除の節税効果(年30%として):年185,400円
  • 10年で節税効果1,854,000円
  • 30年で節税効果5,562,000円

口座管理手数料の負担はわずかです。規約が未対応の会社では、iDeCoを選ぶ理由は「拠出枠の大きさによる節税効果」です。規約が対応した企業型DCだけの会社なら、マッチング拠出でも同じ月56,500円まで出せます。

まとめ:判断軸は「規約・枠・コスト」の3つ

確かめることこうなら判断
① 規約が4月の改正に対応したか未対応で、事業主掛金より多く出したいiDeCo
② 出したい額がマッチング拠出の枠に収まるか収まらない(DB併用の経過措置など)iDeCo
③ iDeCoの手数料÷信託報酬の差出た残高に、積立で届く見込みがあるiDeCoも候補
③ 同上届かない(DCに低コスト商品がある)マッチング拠出

以前の判断軸は「いま以上に拠出したいか?」の1つでした。4月の撤廃で、規約が対応した会社では「多く出したいならiDeCo」とは限らなくなりました。

自分のDCの信託報酬と掛金で、20年後にどちらが多く残るかを出す

③の元が取れる残高と、そこに届くまでの年数は、DCの信託報酬と掛金で人によって変わります。下のチェッカーに2つ入れると、20年後にどちらが多く残るかまで出ます。

比べているのは信託報酬と手数料だけです。所得控除はマッチング拠出とiDeCoで同じなので、マッチング拠出でも同じ額を出せる会社なら、差はこの2つで決まります。

⏱ 30秒で計算

マッチング拠出 vs iDeCo
損益分岐点チェッカー

DCの信託報酬と掛金を入れると、20年後にどちらが多く残るかが出ます(例として私の以前の数字が入っています)。

加入者サイトの商品一覧か、運用報告書に「年◯%」で載っています。

年 %

目安:0.1%前後=最新の低コスト投信 / 0.2〜0.3%=一般的なDC投信 / 0.5%以上=旧来のDC投信

月 円
前提を変える(利回り・年数など) ▼
年 %

既定は楽天・プラス・S&P500の年0.077%。DCと同じ指数の投資信託で比べると正確です。

年 %

何年後で比べるか

20年後に多く残るのは

iDeCo

+0万円

マッチング拠出(DC)0万円
iDeCoに切り替えた場合0万円

iDeCoにした場合の内訳:信託報酬の差で+0万円 / iDeCoの手数料(累計)で−0万円 = 差引+0万円

単年で手数料の元が取れる残高

—

初期費用を含め累計で逆転する年数

—

iDeCoの残高がDCを上回るまで

単年=その年の手数料2,232円より信託報酬の差のほうが大きくなる残高。累計=それまでに払った手数料(加入時の2,829円を含む)も取り戻した時点です。

DCもiDeCoも、原則60歳まで引き出せません。60歳より前に使うかもしれないお金は、所得控除はありませんが途中で引き出せる新NISAに分けておくと、急な出費で困りません。

▶ 新NISAはSBIと楽天のどっち?クレカ積立の還元率で比べた結論

※ 想定利回りが毎年一定の単純計算で、将来の運用成果を約束するものではありません。iDeCoの手数料は月186円(2027年1月から・国民年金基金連合会120円+信託銀行66円)と加入時の2,829円で計算し、運営管理手数料0円の金融機関を前提にしています。マッチング拠出の口座管理手数料は会社負担、所得控除は両制度で同じなので比べていません。マッチング拠出でも同じ額を出せる場合の比較です。


私の企業型DCポートフォリオ

ここまで「外国株式インデックス0.27%」を起点に計算してきましたが、私自身が外国株式インデックス一本で運用しているわけではありません。現在のポートフォリオを開示します。

アセットアロケーション

資産クラス配分
外国株式インデックス40%
J-REIT25%
国内株式インデックス25%
債券10%

9年間運用してきた結果、2026年5月時点の口座残高は約170万円です。事業主掛金月5,500円(9年)とマッチング拠出月5,000円(8年)を継続してきた拠出元本(約113万円)に、運用益が約57万円乗った形で、年率換算でおおむね5%前後の運用パフォーマンスです。

2026年10月からの掛金は、新しく加わったたわらノーロード先進国株式で積み立てています。

加重平均信託報酬

商品ごとの信託報酬は概ね0.20〜0.30%のレンジに収まるため、加重平均するとおおよそ0.25%前後になる想定です。iDeCoに切り替えた場合に同等のアセットアロケーションを組むと、各資産クラスでより低コストな商品が選べるため、加重平均信託報酬は0.10〜0.15%程度まで下げられる試算です。

「自分のポートフォリオで正確に計算したい」という方は、運用報告書に記載されている保有商品の信託報酬を加重平均して、上記のシミュレーションに当てはめてください。


マッチング拠出のメリット(残すべき場合)

私はマッチング拠出制度の導入を社内で設計する側を担当しました。さらに新入社員向けに教育資料を執筆し、初回講義も自分で担当しました(その後の講義は後輩に引き継ぎました)。その立場から見たマッチング拠出のメリットを4つ挙げます。

① 口座管理手数料が会社負担

最大のメリットです。本人が拠出を始めても、口座管理に関する固定費は会社側が負担し続けます。残高が小さい人ほど相対的に大きな恩恵を受けます。

② 給与天引きの楽さ+年末調整の申告も不要

毎月の口座引き落としや拠出限度額の管理を会社の給与システムが自動で処理します。「投資の意思決定をして、あとは放置できる」仕組みになっており、行動経済学的にも継続率が高い構造です。

さらに、所得控除の手続きも会社側で完結します。マッチング拠出の掛金は給与計算の段階で控除済みのため、年末調整での申告は不要です。一方、iDeCoは「小規模企業共済等掛金控除」として自己申告が必要(ただし、給与天引き払いを選んだ場合には不要となる)で、毎年10〜11月に届く「小規模企業共済等掛金払込証明書」を年末調整書類に添付して会社に提出する手間が発生します。投資未経験者にとって、この申告作業の有無は意外と心理的なハードルになります。

③ 制度として体系化されている

会社の規程・社内システム・人事の窓口がすべて整備されているため、加入・停止・拠出額の変更・引き出しまで、迷う場面がありません。iDeCoは自分で全部調べる必要があるのに対し、社内に問い合わせれば誰かが答えてくれる安心感は大きいです。

④ 新入社員にとっての「投資の入口」として最適

新入社員向けに教育資料を執筆し、初回講義も担当した経験から言えるのは、「投資未経験の若手にとってマッチング拠出は最適な入口」だということです。

  • 口座開設の手続き不要(会社が一括処理)
  • 商品ラインナップが30本程度に絞られていて選びやすい
  • 給与天引きなので「使えるお金」が手取りベースで明確になる/支払いの手間や「うっかり忘れ」が起こらない
  • 同期・先輩と相談しやすい(社内制度なので情報共有が起こる)

私が教育資料で強調しているのも「月1,000円から始められる」「投資の最初の一歩として完璧に近い」という点です。iDeCoの最低拠出額が月5,000円なのに対し、企業型DCのマッチング拠出は会社規定によりますが月1,000円程度から始められるケースが一般的で、より少額から投資習慣を作れる点が新入社員に向きます。


iDeCoのメリット(積極的に切り替えるべき場合)

一方、iDeCoには信託報酬以外にもマッチング拠出にない長所があります。

① 会社によっては、拠出枠が大きい

規約が4月の改正に未対応の会社や、DBもあって経過措置(上限2.75万円)を使っている会社では、iDeCoの枠のほうが大きくなります。私の場合、マッチング拠出の上限が月22,000円なのに対し、iDeCoなら12月から月約46,500円でした。家計で月22,000円を超えて積み立てたい人には、ここが最大の理由になります。

② 商品ラインナップの広さ

楽天証券・SBI証券のiDeCoでは、楽天・プラス・S&P500(0.077%)などの楽天・プラスシリーズや、SBI証券ならeMAXIS Slimシリーズなど、信託報酬が年0.1%前後の低コストの商品をピンポイントで選べます。会社のDCラインナップに最適な商品がない方ほど、iDeCoの恩恵が大きくなります。

③ 出口戦略の自由度

受取時に「一時金(退職所得控除)」「年金(公的年金等控除)」「併用」のいずれかを選べる点は両制度とも共通ですが、iDeCoのほうが受取開始年齢や受取期間の選択肢が広く設計されています。退職金の受取タイミングと組み合わせて節税最適化を図る場合、iDeCoのほうが柔軟性があります。

④ 退職・転職時に継続しやすい

マッチング拠出は会社を辞めると停止になります(移換手続きが必要)。一方、iDeCoは個人口座なので転職・退職に左右されないため、長期的な資産形成の継続性ではiDeCoが有利です。


私の判断(2026年10月):マッチング拠出を月22,000円に増やした

2026年5月の時点では、12月の改正後にiDeCoへ切り替える方向で考えていました。マッチング拠出の上限が月5,000円で、「拠出したいのにできない」状態だったからです。

その後、勤務先の規約が2026年10月に4月の改正へ対応し、同じ10月に低コストのたわらノーロード先進国株式もDCに加わりました。私はiDeCoに切り替えず、2026年10月分からマッチング拠出を月5,000円から月22,000円に増やしました。

決め手は3つです。

  • 手続きが社内の申請5分で済む(iDeCoは口座開設と口座振替の手配が要る)
  • 口座管理の手数料を会社が負担している(iDeCoなら年2,232円)
  • 口座がDCの1つのままで済む(既存のDC残高は、在職中はiDeCoに移せない)

iDeCoで元が取れる残高を「手数料÷信託報酬の差」で出すと、以前の商品(年0.275%)なら約113万円、たわらノーロード先進国株式(年0.09889%)なら約1,020万円です。低コスト商品が加わったことで、判断が逆になりました。

▶ 手数料年2,232円と申請5分。12月のiDeCo切り替えを取りやめた理由


iDeCo切替の手続きの流れ

マッチング拠出を停止してiDeCoに加入する際の流れです。

流れ

  1. マッチング拠出の停止申請:会社の人事・総務に申請。停止月から拠出が止まる
  2. iDeCoの加入申請:希望する金融機関でiDeCo口座を開設する。会社員に必要だった「事業主の証明書」は2024年12月に廃止された。勤務先に書類を書いてもらう工程はない(給与天引きの事業主払込を選ぶ場合のみ、会社の関与が必要)
  3. 既存の企業型DC残高はそのまま:企業型DC口座で運用継続。新規拠出のみiDeCoへ
  4. iDeCo拠出開始:月単位で口座引き落としが始まる
  5. 年末調整で申告:「小規模企業共済等掛金払込証明書」を10〜11月に証券会社から受領→会社に提出

申込書類を出してから加入完了までは1〜2か月程度かかります(金融機関によっては2〜3か月と案内しています)。2026年12月分の掛金から広がった枠を使いたいなら、逆算すると9月から10月上旬までに申し込んでおくと間に合います。


あなたが切り替えるべきかフローチャート

ここまでのロジックを、読者の方が自分のケースに当てはめられるよう、判断フローに整理します。

✅ 勤務先の規約が4月の改正に未対応で、事業主掛金より多く出したい → iDeCo切替を検討(マッチング拠出は事業主掛金までしか増やせない)

✅ 規約が対応済みで、出したい額がマッチング拠出の枠に収まる → コストで決める。DCとiDeCoで同じ投資信託を選べるなら、手数料を会社が払うマッチング拠出が安い

✅ DBもあって経過措置(上限2.75万円)の会社で、マッチング拠出の枠を超えて出したい → iDeCo切替を検討

✅ マッチング拠出を実施できない会社員(自社DCのみ/DCなし) → iDeCoで上乗せする(個人で掛金を足せるのはiDeCoだけ)

✅ 新入社員・若手 → まずはマッチング拠出から開始(給与天引きの楽さ+手数料ゼロでスタート)

✅ 退職・転職予定の会社員 → 退職前に必ずiDeCoを開設。マッチング拠出は退職と同時に拠出停止になる

「自分がどのケースに当てはまるかわからない」という方は、自社の人事窓口で「マッチング拠出の規約は4月の改正に対応したか」「自分の事業主掛金と上限はいくらか」「DBはあるか」の3つを聞くと判断できます。


iDeCoに切り替える場合の証券会社選び

将来的にマッチング拠出からiDeCoへ切り替える際、最も重要なのが証券会社選びです。

iDeCoは一度口座を開いたら、商品ラインナップ・口座管理手数料の使い勝手・受取方法の柔軟性まで、その証券会社の制度に長期間付き合うことになります。SBI証券・楽天証券のどちらを選ぶかは、新NISA口座の選び方とほぼ同じ観点で考えられます。

詳しくはこちら:新NISAはSBIと楽天のどっち?両方使う会社員の答えは「経済圏で選ぶ」

iDeCoの加入手続きや必要書類については、別記事で解説しています。

▶ iDeCoの始め方:年収500万円で年55,000円の節税と、掛金上限の見極め

私自身は新NISAはSBI証券、特定口座の積立は楽天証券と両方を使っています。iDeCoを選ぶなら、商品ラインナップで選ぶならSBI証券、資金管理と楽天経済圏の一体感で選ぶなら楽天証券、という整理でした(最終的に私はiDeCoには切り替えず、マッチング拠出を続けています)。

また、松井証券のiDeCoは、投資信託の保有でポイント還元があります。オルカンで年0.0175%、S&P500で年0.0280%と、信託報酬の約3割が戻る計算です。オルカンやS&P500で組むなら、コスト面では松井証券が有利だと考えています。

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楽天証券のiDeCo口座(無料)

楽天・プラス・S&P500(信託報酬0.077%)、楽天・プラス・NASDAQ-100(同0.198%)が選べます。給与振込先の楽天銀行とマネーブリッジで連携でき、入金から運用まで同じ画面で管理できるのが強み。

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※ 投資信託などの金融商品は元本が保証されておらず、値動きによって損失が生じるおそれがあります。手数料やリスクは各社の公式サイトでご確認ください。

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松井証券のiDeCo口座(無料)

マッチング拠出からiDeCoへ切り替えるなら、口座は長く付き合う前提で選びたいところ。松井証券は運営管理手数料0円に加え、投資信託の保有でポイントが還元されます(オルカン年0.0175%、S&P500年0.0280%)。

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※ 投資信託などの金融商品は元本が保証されておらず、値動きによって損失が生じるおそれがあります。手数料やリスクは各社の公式サイトでご確認ください。


退職時の選択肢(参考)

退職時にはマッチング拠出は強制的に停止になります。退職後の選択肢は次の通り。

  • 企業型DC残高をiDeCoに移換:個人型として継続運用
  • 企業型DC残高を新しい会社の企業型DCに移換:転職先がDC制度を持つ場合
  • 何もしない:退職から6ヶ月以内に手続きしないと、自動的に国民年金基金連合会に移換され運用ができなくなる(要注意)

退職前にiDeCo口座を開設しておくと、退職時の移換がスムーズです。


ライフイベントとの組み合わせも考える

マッチング拠出 vs iDeCoの判断は、ライフイベントとも密接に関連します。たとえば、

  • 育休取得期間中の拠出をどうするか(マッチング拠出は給与天引きなので、休業期間は実質拠出停止になる)
  • 退職金との出口戦略との兼ね合いで切替タイミングが決まることも
  • 持株会との比較で、企業型DC・iDeCo・NISAの優先順位を整理する必要もある

関連記事:育休21日で給付金26万円。手取り10割でも見落とした3つの盲点

奨励金10%の持株会と新NISA、長い目で見てどちらが残るかを6つの視点で


まとめ:判断軸は「規約・枠・コスト」の3つ

3制度の関係

  • 企業型DC:会社が拠出
  • マッチング拠出:自分が企業型DCに上乗せ。2026年4月から、規約が対応すれば事業主掛金を超えて出せる
  • iDeCo:自分専用の口座。2026年12月から、企業年金と合計で月6.2万円まで

重要:在職中の資産移管はできない

  • マッチング拠出停止→iDeCo加入は「新規拠出先の切替」のみ
  • 既存企業型DC残高はそのまま運用継続
  • 「乗り換え」のイメージは誤り
判断軸は3つ
  • 規約が4月の改正に未対応で、事業主掛金より多く出したい → iDeCo
  • 出したい額がマッチング拠出の枠に収まらない(DB併用の経過措置など) → iDeCo
  • 枠に収まるなら、「iDeCoの手数料÷信託報酬の差」で元が取れる残高を出して決める。DCに同じ投資信託があればマッチング拠出

私の判断

  • iDeCoには切り替えず、2026年10月分からマッチング拠出を月5,000円→月22,000円に増やした
  • DCに低コスト商品が加わり、iDeCoで元が取れる残高が約113万円から約1,020万円に変わったため

「マッチング拠出 vs iDeCoはどちらが得か」は、勤務先の規約と、DCの投資信託のコストで答えが変わります。まず勤務先に、規約が4月の改正に対応したかを確かめてください。


注:制度の内容と施行日は厚生労働省「2025年の制度改正」、手続きの期限は松井証券と楽天証券の案内で2026年9月12日に確認しています。受付期間は運営管理機関ごとに定められているため、期限はご自身が口座を持つ金融機関の案内で確認してください。試算の前提(信託報酬・手数料)は本文中に明記しています。マッチング拠出の上限撤廃とDB併用時の経過措置は、厚生労働省の参考資料(令和8年7月13日事務連絡)で2026年10月4日に確認しています。


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マネパパ

マネパパ

30代会社員・人事企画部門・JGCホルダー。従業員持株会を入社9年目に停止し、インデックス投資(新NISA・iDeCo)に全面移行。 マイルで乳幼児連れリゾート旅行を実践中。数字とリアルにこだわった発信を心がけています。

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